磁気共鳴画像撮影方法(Magnetic resonance imaging)をMRIと呼びます。原子核の磁気共鳴現象を利用した撮影方法です。
臨床では、主に水素原子核の磁気共鳴現象を利用し、生体内の水素原子核の密度や存在状態の違いを画像化します。
MRIは、エックス線のような放射線を利用しないので被曝がありません。
また、CTと比べて軟組織の再現性が高いため非侵襲性で、軟組織病変の診断に有用な画像検査方法として広く利用されており、検査件数は増加の一途をたどっています。
インプラント治療を行なった後に脳のMRI検査を受けようとしたら受けられなかった?とおっしゃる方がいます。
果たしてインプラント治療を行うとMRI検査が本当に受けることができないのか?噂の真相に迫りたいと思います。
この内容は、日口腔インプラント誌に掲載されている3つの論文を参考にして書いています。詳しく知りたい方は、最後に参考文献をまとめていますので、クリックして読んでみてください。
磁気共鳴画像撮影方法(Magnetic resonance imaging)をMRIと呼びます。原子核の磁気共鳴現象を利用した撮影方法です。
臨床では、主に水素原子核の磁気共鳴現象を利用し、生体内の水素原子核の密度や存在状態の違いを画像化します。
MRIは、エックス線のような放射線を利用しないので被曝がありません。
また、CTと比べて軟組織の再現性が高いため非侵襲性で、軟組織病変の診断に有用な画像検査方法として広く利用されており、検査件数は増加の一途をたどっています。
核磁気共鳴撮影法(MRI)は、磁場を用いて生体の断面像を取得する非侵襲的な診断技術です。
しかし、モーションアーチファクトとパーシャルボリューム効果および磁化率アーチファクトの3つの現象があります。
※アーチファクトとは:ノイズなどを原因とした実際には存在しない虚像のこと。CTやMRIを撮影した際に発生する。
モーションアーチファクトは、患者の動きにより画像化される現象です。
パーシャルボリューム効果とは、MRIデータの平均化により信号が異なる状態で画像化される現象です。
磁化率アーチファクトは、生体内の磁化率の大きい部位で発生し、磁化率が高い物質が原因となります。
歯科では、お口の中の人工物(銀歯や金歯)が発生源となります。特に矯正用ワイヤーや磁石は注意が必要です。
磁化率の高いのは、鉄・ニッケル・コバルトが知られています。これらの金属が生体内に存在する場合に、非常に大きなアーチファクトを引き起こします。
歯科にて使用されるニッケルクロム合金やコバルトクロム合金は、磁化率アーチファクトの原因となります。
一方でインプラントに使用する金属のチタンは、磁化率が低いためにほとんどアーチファクトを起こさないそうです。
また、古い被せ物や入れ歯は、不純物として鉄が含まれていることがあるので注意が必要です。
磁石式の入れ歯やインプラントを使用している場合は、磁石を持つ被せ物や入れ歯を装着したままMRI検査を行うと頭蓋骨までの広範囲にアーチファクトが見られる可能性があります。
このため頭部のMRI検査を行う場合は、事前に被せ物を取り外す必要があります。
ただし、被せ物を外してもキーパー部の材質は、磁性体なのでアーチファクトは避けられないです。
矯正装置において、ブラケットやワイヤーなどステンレスは、アーチファクトになるために取り外す必要があります。
金属のアーチファクトは、MRIにおける磁化率アーチファクトのひとつです。
特に鉄やコバルト、ニッケルなどの強磁性体を装着している患者さまのMRIは歪みがはっきり目立ちます。
磁性体金属の影響は画像だけではなく、金属自体の発熱、磁力に伴う磁性体の位置変化などが人体に対する問題となります。
磁化とはあらゆる物質が磁場内に置かれたとき、程度は異なれど磁石としての性質を持ち、その程度が磁化率です。
磁化率によって物質は、1,反磁性 2,常磁性 3,強磁性物質の3つに分類されます。
強磁性物質は磁場に強く引き付けられる物質で鉄(ステンレススチール)やコバルトやニッケルなどの金属がこれに相当します。
CTでは、磁性体の種類に関係なくアーチファクトが生じ、原子番号が高くなるとアーチファクトが強くなり、金属量もそれに比例します。
一方MRIのアーチファクトは、磁性体の種類と量に依存します。また、撮影方法によってもアーチファクトの量が異なります。
全ての金属がMRIで金属アーチファクト、発熱、磁力に伴う位置変化を伴うわけではなく、磁場にさらしても磁化しない非磁性体金属(チタン、金、銀、パラジュウムなど)は、MRIに対して影響のない金属とされています。なのでインプラントは、ほぼ問題ないという事になります。
インプラントを行なってMRIを撮影できるか?できないか?という問題ですが、基本的にMRIを撮影することができます。
多くのインプラント治療は、パノラマレントゲンとCT撮影を行います。そしてそれだけでも十分な情報量です。
しかし、骨髄の骨梁構造が疎である場合、CTで下顎管を見つけることができない場合にMRIが有効利用となります。
また、顎関節症で関節円板の状態確認は、MRIでしかできないために非常に有効になります。
インプラントの金属は、チタンになります。
チタンは、磁場にさらしても磁化しない非磁性体金属になりますので、MRI撮影をしてもアーチファクトが出ることもなく、普通に撮影することができます。
インプラント後にMRI検査できる?できない?噂の真相は、できる!でした。
しかし、磁石などを用いた入れ歯タイプのインプラントなどお口の中に固定されている患者さまは、発熱や位置異常を起こすことからMRIの撮影はできません。
総説 MRIの原理と特徴
角 美佐
引用元:日口腔インプラント誌 第36巻 第3号 171-176
総説 歯科医療関係者が知っておくべきMRIのアーチファクト
香川豊宏 白井(筑井)朋子 稲富大介
引用元:日口腔インプラント誌 第36巻 第3号 177-184
修復補綴装置装着患者のMRI検査の危険と影響
箕輪和行
引用元:日口腔インプラント誌 第36巻 第3号 185-189