保険診療には適用条件があり生命保険は対象外のため、費用を抑えることが難しいインプラント治療ですが、医療費控除の対象となります。
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に生計を共にする家族や親族のために医療費を支払った場合において、医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができる制度です。
インプラント治療の医療費控除患者さまから「インプラントは保険適用にならないのですか?」とのご質問を多数いただきます。
インプラントは、2012年より一部保険適用となりましたが、その条件はかなり限定されています。
ここでは、保険適用でインプラント治療を受けられる医療機関と症例について、説明します。
初めに保険診療とは、健康保険法または国民健康保険法に定められた公的医療保険制度の対象となる診療のことです。年齢や所得により、自己負担割合1~3割で医療を受けられます。
治療だけを希望する場合でも、保険診療ではそれぞれの病気に対して検査を行いルールに則った治療を行わなければなりません。
歯科においては、歯石除去だけを希望されることがありますが、検査を行いその後の診査診断を元に歯石除去を行わなければならないというルールがあります。
保険外診療(自費診療)とは、医療保険制度を利用しない診療を指します。
日本の厚生労働省が承認していない治療や薬を用いて診療する場合は、保険外診療(自費診療)となります。治療費は、全額自己負担(10割負担)となります。またその費用は、それぞれの医療機関が決めて良いこととなっています。
インプラントの場合、歯科医院により費用(金額)が異なる理由もこのためです。
インプラント治療を保険適用で受けようとする場合は、歯科医院ならどこでも可能という訳ではありません。
まず、医療機関としての条件をクリアしていることが前提となります。
『社会保険歯科診療 令和4年4月版 歯科保険研究会 編』によると医療機関として以下が必須条件となります。
告示
(1)歯科又は歯科口腔外科を担当する歯科医師として相当の経験を有する常勤の歯科医師が2名以上配置されていること,
(2)当該療養を行うにつき十分な体制が整備されていること,
(3)当該療養を行うにつき十分な機器及び施設を有していること,
通知
(1)歯科又は歯科口腔外科をを標榜している保険医療機関であること,
(2)当該診療科に係る5年以上の経験及び当該療養に係る3年以上の経験を有する常勤の歯科医師が2名以上配置されていること,
(3)病院であること,
(4)当直体制が整備されていること,
(5)医療機器保守管理及び医薬品に係る安全確保のための体制が整備されていること,
(6)当該療養に必要な検査機器を設置していること,
疑義解釈
問 施設基準における当直体制に関して,保険医療機関内で当直体制が確保されていればよいか.
答 施設基準で届出た常勤の歯科医師が緊急時に対応できる体制が確保されていれば差し支えない.
(引用元:『全科実例による 社会保険歯科診療 オンライン 令和4年4月版』 P26/歯科保険研究会 編 /医歯薬出版株式会社/2024年4月 )
保険適用条件
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対象患者
従来のブリッジや有床義歯(顎堤形成後の有床義歯を含む)では咀嚼機能の回復が困難な患者で,次のいずれかに該当するもの.
(1)腫瘍,顎骨骨髄炎,外傷等による広範囲な顎骨欠損もしくは歯槽骨欠損症例(歯周病および加齢による骨吸収を除く)またはこれらが骨移植等により再建された症例.なお,欠損範囲は,上顎は連続した4歯相当以上の顎骨欠損症例または上顎洞もしくは鼻腔への交通が認められる顎骨欠損症例,下顎は連続した4歯相当以上の歯槽骨欠損または下顎区域切除以上の顎骨欠損であること.
(2)医科の保険医療機関(医科歯科併設の保険医療機関では医科診療科)の主治の医師の診断に基づく外胚葉異形成症等または唇顎口蓋裂等の先天性疾患であり,顎堤形成不全であること,あるいは外胚葉異形成症等の先天性疾患であり,連続した1/3顎程度以上の多数歯欠損であること.
(3)6歯以上の先天性部分無歯症または前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)であり,連続した1/3顎程度以上の多数歯欠損(歯科矯正後の状態を含む)であること.
(引用元:『全科実例による 社会保険歯科診療 オンライン 令和4年4月版』 P26/歯科保険研究会 編 /医歯薬出版株式会社/2024年4月 )
上記3つの条件がインプラント保険適用の要件です。そのため虫歯や歯周病、破折で歯を失ってインプラントを行う場合は、保険が適用されません。保険適用のケースは、癌や事故、先天性疾患などで広い範囲で顎の骨を失った場合などに限られます。
以下にインプラントが保険適用なるケースを挙げます。
いずれの場合も入れ歯やブリッジでの治療が困難だと判断された場合にインプラントが保険診療の対象となる可能性があります。
詳しくは、担当の歯科医師にご確認ください。
内容 | 費用 |
---|---|
CT | 1,170点 |
広範囲型顎骨支持型補綴診断料 | 1,800点 |
1次手術 | 11,500点 |
2次手術 | 4,500点 |
費用分類 | 内容 | 費用 |
---|---|---|
インプラン体 | 標準型Ⅰ | 2,020点 |
標準型Ⅱ | 3,500点 | |
標準型Ⅲ | 2,370点 | |
体特殊型 | 5,820点 | |
アバットメント | アバットメント(Ⅰ) | 1,410点 |
アバットメント(Ⅱ) | 1,370点 | |
アバットメント(Ⅲ) | 2,610点 | |
アバットメント(Ⅳ) | 1,620点 |
内容 | 費用 |
---|---|
塹間装着体Ⅰ | 620点 |
塹間装着体Ⅱ | 361点 |
塹間装着体Ⅲ | 409点 |
塹間装着体Ⅳ | 126点 |
内容 | 費用 |
---|---|
アタッチメントⅠ | 358点 |
アタッチメントⅡ | 1,380点 |
アタッチメントⅢ | 340点 |
内容 | 費用 |
---|---|
スクリュー | 280点 |
シリンダー | 753点 |
生命保険は契約内容により、亡くなった時だけでなく、病気や怪我で入院や治療を受けた際の保障を受けることができます。生命保険以外にも医療保障保険に加入している場合は、怪我や入院した際に給付金を受け取ることが可能です。
では、インプラントは、生命保険の対象となるのでしょうか。
基本的にインプラント治療は、生命保険対象外となります。ただし、事故による顎の骨の損傷、病気による顎の骨の損傷(顎骨骨髄炎で連続して1/3顎失った場合)、生まれつき顎の形成不全・生まれつき顎の骨が1/3がない場合は、給付金の対象となる場合があります。詳しくは、ご自身の加入している保険会社に確認しましょう。
またインプラントは、2012年3月31日まで、先進医療として認められていました。
先進医療とは、「厚生労働大臣が認めた高度な医療技術を用いた療養その他の療養のうち、保険給付の対象とすべきかどうか検討中の療養」のことで、当時は、先進医療給付金が支払われましたが、2012年4月より条件を満たした場合に保険適用となり、先進医療から除外されました。そのため、現在は生命保険の対象外となります。
保険診療には適用条件があり生命保険は対象外のため、費用を抑えることが難しいインプラント治療ですが、医療費控除の対象となります。
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に生計を共にする家族や親族のために医療費を支払った場合において、医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができる制度です。
インプラント治療の医療費控除インプラント治療を保険適用で受けるための条件として、まず医療機関が限られています。そして、事故や先天性疾患の場合に保険適用となり、歯周病や虫歯で歯を失った場合は、自費診療となります。
保険診療には適用条件があり生命保険対象外のインプラント治療ですが、医療費控除対象です。確定申告することで所得税等が還付されることがありますので、所轄税務署へ確定申告書を提出しましょう。