インプラント治療の成功率 | 渋谷歯科 | 平日夜7時半・土日も診療の渋谷の歯医者

インプラント治療の
成功率Implant

インプラント治療を考えた時にインプラント治療の成功率は、どのくらいあるのかについても気になることのひとつではないでしょうか。
インプラントの成功率に関しては、海外の文献が主となりますが、日本人のデータが知りたいと思います。そのため、出来るだけ多くのインプラント成功率と日本人のデータをわかりやすく説明します。

インプラント成功の定義

トロント会議

1988年にカナダのトロントでインプラント成功基準のガイドラインが話し合われ、次の4つがインプラント治療成功のコンセンサスになります。
1.インプラントは、患者と歯科医師の両方が満足する機能的、審美的な上部構造を良く支持している。
2.インプラントに起因する痛み、不快感、知覚の変化、感染の兆候がない。
3.臨床的に検査するとき、個々の連結されていないインプラントは動揺しない。
4.機能開始1年以降の経年的な1年ごとの垂直的骨吸収は平均0.2mm以下である。

喫煙

厚生労働省の歯科インプラント治療のためのQ&A(平成26年3月31日 日本歯科医学会厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」)では、インプラントが何年間口の中で機能したかという問いには、現在の研究報告を見る限り適切に報告するのは、難しいとしており、インプラントの残存率は、部位や条件により異なると回答し、システマティックレビューを参考とするに、部分及び全部欠損における10〜15年の生存率は、上顎で約90%、下顎で約94%である。
即時や骨移植を行なった症例では、87〜92%と回答しています。しかし、これらの参考文献は海外の文献が多く、日本人にどこまで参考になるかは難しい判断です。

インプラント成功率(日本人データ)

インプラントの成功率は、9割を超えるなどと良くいわれていますが、果たして本当にそうでしょうか。このインプラントの成功率は、様々な見解があり、日本国内のデータと海外のデータでも色々と差があります。
やはり我々は日本人ですので、骨格の大きい外人のデータではなく、最低でもアジアのインプラント成功率のデータが知りたいと思いますので、日本人データで本数が多い文献を紐解いてみました。

インプラント成功率の論文を紐解く

口腔インプラントの生存に関する疫学調査:オッセオインテグレーションの獲得と意地から見た評価

参考文献:日本口腔インプラント学会誌掲載論文 第15巻 第1号(平成14年3月31日)(2020-11-04)

概略:この論文では、岡山大学歯学部附属病院で過去10年間インプラント治療を受けた患者98名(総インプラント体262本)の生存率の評価を行っています。

  1. 被せ物装着前の骨結合が得られているか?
  2. 被せ物を装着後のインプラント生存率
  3. 被せ物トラブル発生に関して

上記の3つを評価しています。

方法

  1. 研究対象インプラント治療を受けた患者98名(総インプラント体262本)の生存率
  2. 使用したインプラントシステムブローネマルクインプラント162本、IMZインプラント(TPS)57本、フリアリット-2インプラント(TPS)29本、ステリオスインプラント(TPS)14本
  3. 本研究期間に上部構造を装着した患者74名

上部構造装着後生存率患者基礎データ

インプラント埋入本数 188本
上下顎埋入本数(上/下:本) 55/133本
平均埋入本数 2.3±1.4本
患者数(人) 74人
性別(男/女:人) 35/39人
平均年齢(歳) 56±14.6歳
平均欠損歯数(本) 3.5±3.3本
平均機能期間(年) 3.2±2.8年
上部構造数(装置) 89
オーバーデンチャー 2
ボーンアンカードデンチャー 9
シングルフリースタンド 16
ボーンアンカードブリッジ 30
IMZインプラント連結 32

インプラント体埋入本数

    上下顎 上顎 下顎
前歯部 IMZ 4 0 4
F2 8 0 0
Brane 32 28 60
Steri 0 4 4
臼歯部 IMZ 2 51 53
F2 2 19 21
Brane 32 70 102
Steri 2 8 10
総数   82 180 262

結果1:骨結合獲得率(オッセオインテグレーション獲得率)

オッセオインテグレーションとは、インプラントと骨が結合しているか否かを意味します。
早速、結果のグラフを見ていきましょう。今回、わかりにくいインプラントの幅や長さの結果は、割愛しました。

インプラント体は、240本中22本が失敗なので92%成功です。
平均年齢は、上下あごで成功55.3歳、失敗62歳です。
男女比は、上下あごで女性が4本多く成功し、失敗は2本男性が多かったです。
喫煙率は、17%が成功で、31%が失敗でした。
糖尿病率は、1.3%が成功でした。

    獲得 失敗 P-value
インプラント体本数(本) 上下顎 240 22 <0.01
上顎 67 15
下顎 173 7
平均年齢 上下顎 55.3±14.5 62.0±11.7 0.03
上顎 56.1±16.6 65.6±6.8 0.01
下顎 55.0±13.6 51.0±12.0 0.46
男/女(本) 上下顎 118/122 12/10 0.63
上顎 31/36 8/7 0.62
下顎 87/86 4/3 >0.99
インプラント体平均幅径 上下顎 3.9±0.4 3.8 0.49
上顎 3.8±0.7 4.0±0.5 0.44
下顎 4.0±0.4 3.8±0.3 0.99
インプラント体平均長径 上下顎 12.4±2.7 12.0±2.2 0.21
上顎 12.7±2.6 11.8±2.0 0.22
下顎 12.3±2.7 12.4±2.8 0.93
喫煙率(%) 上下顎 17.3 31.8 0.14
上顎 1.6# 40.0 <0.01
下顎 23.3## 14.3 >0.99
糖尿病罹患率(%) 上下顎 1.3 0 >0.99
上顎 1.5 0 >0.99
下顎 1.2 0 >0.99

#:4本不明 ##:10本不明

結果2:骨結合生存率(オッセオインテグレーション生存率)

骨と結合後、どのくらいの期間お口の中で生存率しているか、簡単にいえばお口の中でどのくらい機能しているかを表す期間が、オッセオインテグレーション生存率になります。

被せ物(上部構造)装着後生存率

インプラントと骨の結合後、被せ物をセットした後に、どのようなトラブルがあったかを調査しています。
どのようなトラブルが多いかをあらかじめ知っておくと対応しやすいと思います。

上部構造装着後のトラブル内訳

上部構造の種類 装置数 トラブル数 トラブル内訳
オーバーデンチャー 2 2 アバットメントスクリューの緩み(1)
Oリングハセツ(1)
ボーンアンカードデンチャー 9 1 アバットメントスクリューのハセツ(1)
シングルフリースタンド 16 1 仮着中の上部構造ダツリ(1)
ボーンアーカードブリッジ 30 4 アバットメントスクリューの緩み(1)
上部構造前装面破折(1)
仮着中の上部構造外れない(2)
IMZ天然歯連結 32 16 タイタニュウムスクリューの緩み(8)
IMCインサートの緩み(3)
上部構造前装面破折(5)
インプラントのトラブル

考察

この調査では、インプラント治療の成功の基準は、骨結合獲得の有無と被せ物(上部構造)装着後生存の有無に必ずしも分けて定義されてこなかったが、その意義から考えても、これらは分けて診断基準が確立されるべきだと述べています。
確かに今までの論文では、どちらも一緒に評価をされていたので、どの状態でインプラントが失敗したのかが明確でなかったと思います。この調査結果でいつ失敗したのかということにプラスしてトラブルの内容も分かります。
※骨結合率(オッセオインテグレーション獲得率)
この論文では、冒頭にも書かせていただいたトロント会議の内容を成功基準としたそうです。
このトロント会議の内容は、骨との結合の黄金律ともいうべき基準であり、被せ物セット後を含まない基準としては、妥当性が高いと述べています。
一般的に骨との結合を妨げる因子として以下の3つが考えられるそうです。

今回の調査では次のことがわかりました。

一方、インプラントメーカーによる差に関して詳しく知りたい方は、原文をご確認ください。

※骨結合生存率(オッセオインテグレーション生存率)
一旦、骨と結合が得られれば信頼性の非常に高い治療である。一度、骨と結合してしまえば上下あごの部位であまり差は見られなかった。
※被せ物トラブル
患者さまにとってのインプラント成功は、長期に渡ってお口の中でトラブルなく機能することです。本調査においても、上部構造装着後トラブルが認められたものが、約1/4程度見られました。上部構造もセメントタイプとネジ止めタイプがありますが、現在のところ2つに優劣はまだ明らかではありません。

結論

過去10年間に岡山大学歯学部附属部病院で行われた口腔インプラントの予後に関して厳密な調査を行い、以下の結果を得た。

骨結合獲得率(オッセオインテグレーション獲得率)1次手術成功率は、上あご81.7%、下あご96.1%で下あごに比べて上あごの成功率が低いことがわかった。
インプラント体10年生存率は、上あごで96.4%、下あごで94.0%で、埋入部位による差はありませんでした。
被せ物装着後89装置21装置(23.6%)に問題があった。
本研究結果は、本院の口腔インプラント治療における臨床事実を構成するコアデータとなり、患者さまに対するインフォームドコンセントの診療ガイドライン作成に役立つと考えられる。

参考文献:日本口腔インプラント学会誌掲載論文 第15巻 第1号(平成14年3月31日)
口腔インプラントの生存に関する疫学調査:オッセオインテグレーションの獲得と意地から見た評価(2020-11-04)

歯科医院や研究により成功率の出し方が違う。

インプラント成功率の出し方は、歯科医院や研究により異なります。もっといえばインプラントメーカーや部位によっても変わります。そのため、比較することは非常に難しいです。
歯科の研究論文により成功率の出し方が違うように、歯科医院も成功率の出し方が、ひとつのインプラントメーカーだけの成功率で、実は他のメーカーを使用しているとなかなか何を信じたら良いか分からないこともあります。

インプラントは、日々進化しています。2024年現在、第4世代のインプラントが発売されていて、同じインプラントメーカーでも昔のインプラントと現在のインプラントでは、成功率が異なることになります。しかし、新しいインプラントは臨床応用数がまだ少なく、成功率が出ていないものもあります。
一概にインプラント成功率○○%を信じるのではなく、他のポイントもしっかりと確認して総合的に判断しましょう。インプラント治療をしている歯科医師の成功率は約90%以上で、それ以上の%にするべく学会やセミナーに参加して研鑽を積む歯科医師が多いと感じます。

インプラント成功率まとめ

インプラント治療の成功率は、歯科医院でも研究でも出し方が全く異なるため、一概に成功率○○%を信じてはいけません。
しかし、ある程度のインプラント経験のある歯科医師は、成功率90%を超えています。そこからいかに100%に近づけようと学会やセミナーで知見を深め研鑽する歯科医師は、成功率がもっと高くなると思います。
ご自身のインプラント治療の成功率を上げるためには、日本口腔インプラント学会専門医の方や積極的にセミナーや学会に参加している歯科医師を選ぶと良いかもしれません。

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