天然の歯のような仕上がりと表記されていることもありますが、歯周病などで歯を失った場合は、歯ぐきから治療する必要があります。そのため天然の歯と同じような見た目にならないこともあることをご理解ください。
また、オールオン4の被せ物には種類があります。ジルコニアなどは天然の歯に近い材質なので仕上げりもキレイですが、アクレリックはプラスティック製のため、透明感などはありません。
ハイブリッドは、プラスティックに陶材の粒子を混ぜて作られているので、段々に着色が進んでしまいます。
後悔しないオールオン4
オールオン4は自費診療であり、非常に高額な治療です。
そのため、正しい知識がないままに治療を受け、こんなはずじゃなかったと後悔することのないよう、事前に知っておくべきことを説明します。
天然歯のようには噛めません。

インプラントは天然の歯のように噛めますよ!とおっしゃる方もいますが、天然の歯のようには、噛めません。
図にあるとおり、天然歯には歯根膜という組織がありますが、インプラントは人工歯根(フィクスチャー)と歯槽骨が直接骨結合しています。
歯根膜は、いわゆるトランポリンのように弾性がありますが、人工歯根に骨結合しているインプラントは、弾性がないので噛んだ際に沈み込むような感覚はありません。
そもそも天然の歯とインプラントでは構造が違うので同じような感覚で噛むことはできません。しかし、入れ歯に比べたら、天然の歯に近い感覚で食事することができます。
入れ歯は粘膜の分沈み込むので、天然の歯と同じような感覚は得られませんが、インプラントは骨と結合して沈み込まないため、入れ歯よりは天然の歯に近い感覚です。
天然歯と同じ見た目にはなりません。

1番奥(7番目)の歯がありません。
オールオン4は、前歯から数えて6番目までの左右合計12本からなる被せ物です。天然の歯は左右合計14本あるため、左右1本ずつ歯が少ない(写真赤丸部分)状態となります。
日本人は、古来より「噛み応え」「噛み心地」など噛むことに関して敏感ですが、1番奥歯が1本ないことにより物足りなさを感じるかも知れません。
普段の食生活は患者さまにより異なるため、難しい判断になりますが、奥歯で噛みしめる感覚は、天然の歯に比べると劣る部分があると思います。

被せ物は、一生物ではない。
オールオン4の被せ物は、一生物ではありません。自転車や車のタイヤと同じだと思ってください。毎日乗っていれば、タイヤが削れて取り替える日が来ます。
天然歯は削れてもある程度は、再石灰化することができますが、人工の被せ物は削れたら元に戻ることはありません。そのため、10年位で被せ物の作り直しが必要になります。
人工物は、削れたり壊れたりするものであることを忘れないでください。

被せ物と歯ぐきに隙間できます。
オールオン4は、4本のインプラントを土台として、上に被せ物を装着する仕様です。写真では歯ぐきがないので空間になっていることが分かると思いますが、この空間に本来ある歯ぐきは、骨が痩せれば当然歯ぐきも下がり、隙間ができます。
歯が無くなった部位は、常に変化を繰り返し、日に日に骨の吸収が起こり、徐々に隙間ができてしまいます。

できた隙間には食べかすが入りやすくなります。この隙間を埋めるためには、型をとって一旦被せ物をお預かりして、歯科技工士さんに修理してもらう必要があります。その間の食事は、とても不便になります。
日々の歯ブラシは、毎食後1日3回+歯間ブラシ!
オールオン4治療を受けるのであれば、毎食後の歯ブラシや歯間ブラシが必須になります。
食べかすや汚れが付着している状態が長く続くとインプラント周りの歯ぐきが炎症を起こし、歯周病になる可能性がどんどん高くなります。また、天然の歯を歯周病で失った患者さまは、歯周病菌感受性が高い可能性があるため、お口の中は常に清潔に保っておく必要があります。
オールオン4の寿命を長持ちさせられるか否かは、患者さま次第になります。お口の中を清潔に保って1年でも2年でも長くオールオン4を長持ちさせましょう。
オールオン4の場合は、歯ぐきとインプラントの境目の清掃が重要になりますので、汚れを落としやすい歯間ブラシを併用しましょう。歯間ブラシは、さまざまな太さがありますので、自分に合った歯間ブラシを歯科衛生士さんに相談しましょう。

ナイトガードが必須です。
就寝中の歯ぎしり・食いしばりの力は、おおよそ100kgといわれ、歯の上でお相撲さんが暴れているのと同じくらいの力がかかっています。
オールオン4は、少ない本数のインプラントで12本の歯を支える仕組みのため、荷重からインプラントを守るためにも就寝中のナイトガード(マウスピース)装着は、必須です。
また、昼間TCHといって上下の歯を食いしばる癖などがある方は、昼間の装着も必要になることがあります。

定期的なメンテナンスが必須です。
なぜ歯を失うことになったのか、今一度考えてみましょう。その原因の一つに定期的に歯科医院に通ってクリーニングや歯石除去などのメンテナンスを受けなかったこともあると思います。虫歯や歯周病の原因である細菌の塊(バイオフィルム)を歯科医院にて定期的に除去することが、今後インプラントを失わないための最善策です。
オールオン4の被せ物にも歯石が付着することをご存じでしょうか。歯石は、人工歯にも付着します。被せ物により汚れが付着しやすい・しにくいがあります。ジルコニアは、汚れや歯石などが付着しにくいですが、ハイブリッドやアクレリックは、付着しやすいです。メンテナンスの間隔は、患者さまの日々の歯ブラシにもよりますが、材質によっても判断しなければなりません。

オールオン4を行った患者さまは、3ヶ月に1度の定期的なメンテナンスは、必須です。また、日々の歯ブラシ・歯間ブラシも行い、常に清潔な状態を保ちましょう。
このメンテナンスを行わないでオールオン4を長持ちさせるのは、不可能です。
オールオン4治療では、禁煙必須です。
愛煙家の方にとっては、大きな決断になるかもしれませんが、完全禁煙が必須です。少しくらい大丈夫かと思うかもしれませんが、インプラントにとってタバコは、天敵です。
歯ぐきには、無数の毛細血管が通っていますが、タバコを吸うと歯ぐきの末梢まで血液が行き渡らず、インプラント周囲炎になりやすくなります。
オールオン4は、4本のインプラントで被せ物を支えているため、1本でもインプラント周囲炎になった場合は、残り3本のインプラントまで共倒れになる可能性が高いからです。タバコは、インプラントにとって100害あって一利なしです。
オールオン4治療を選択するのであれば、必ず禁煙しましょう。

唇が凹んだような見た目になる。
治療後、鼻の下が凹んだような顔に変わってしまったという患者さまを何名か診たことがあります。その多くの患者さまは、それまで入れ歯を使用していました。
入れ歯では、強度を高めかつ固定するために厚みが必要なで、その部分が膨らんでいます。しかしオールオン4では、入れ歯のように厚みをもたらせる必要がなく、むしろ清掃性を良くするため、歯ぐきをグッと覆うことはありません。
入れ歯の厚みにもよりますが、ほっぺ側が入れ歯と同じような形にならない場合があり、その場合は、鼻下がどうしても凹んで見えてしまいます。

まとめ
どのような治療でも全てが元通りになるという治療はないと思いますが、事前に知ることで「後悔」ではなく「予測していたこと」になります。
オールオン4治療を受ける前にしっかりと正しい知識を得て、後悔しないようにしましょう。不安や疑問がありましたら、当院へご相談ください。